食品加工産業で節電と安全管理を上手に両立する方法
メーカーの中でも特に節電が難しいとされる食品加工産業。
製品(食品)が人体の安全に関わることが大きな理由の1つです。
今回は、食品加工業界の節電事情や、節電と安全管理のバランスを保つ方法について詳しく見ていきましょう。
食品加工産業での節電が難しい2つの理由
数ある工場の中でも食品加工産業は節電がより困難とされますが、どのような事情があるのでしょうか?
ここでは、食品加工産業でなかなかスムーズに節電を達成できない理由を具体的に解説します。
1.安全管理と共存できない節電では全く意味がない
食品加工産業における絶対的なテーマは、「食品の安全管理」です。工場の節電も重要ですが、食品の場合は安全管理を怠ると品質が落ち、収益も一気に低下します。
経営者としては、多くのコストを掛けてでも安全管理は徹底しなければなりません。安全との共存が実現して、初めて節電対策を考えることが出来ます。
実際に、コスト管理を重視しすぎたあまり競争力を失った食品加工メーカーもありました。そこから従来の信頼を回復するには、より多くのコストを掛けなければなりません。
製品の安全性が維持できない節電は、食品加工業界において何ら意味をなしません。
2.工場ごとに製品プロセスが異なるため独自の管理法が必要
食品加工業界の特徴として、工場ごとに製品加工プロセスが細かく異なっている点が挙げられます。よって節電管理においても、加工プロセスごとに管理法を構築しなければならない面倒さがあります。
類似の食品群や同じ加工機器を使用していたとしても、各メーカーが理想とする品質には大きな差があります。そのため、工場ごと若しくは製品ごとの節電管理法の策定が必要です。
このような状況下では、きちんと管理できる人材が常に在籍していなければなりません。また、その人材がいなくなってしまうと節電が機能しなくなるリスクも潜んでいます。
よって食品加工業界では、管理法が構築出来た後も長期的な運営には困難が付きまといます。
食品加工産業では総合的な節電が重要!2つの対策方法
食品加工産業における節電の困難さは既に述べた通りですが、困難な中でも節電を実践していかなければ、工場運営に悪影響を及ぼす可能性も考えられます。
食品加工産業では製造加工以外も含めた総合的な節電対策が必要です。具体的な対策方法について解説します。
1.製造機器以外の電気機器もマメに電源オフして節電!
食品加工工場では、品質クレームによって売上が大きく落ちるリスクがあります。そのため、なるべく製造加工と直接的に関係ない部門で節電していく必要があります。
少量の電力消費でも積もれば大きな電力消費に繋がります。このような電力消費の無駄を削減する努力が、食品加工工場を長期的に安定経営することに直結します。
日々の努力で少量の電力消費を削減していくことは、食品加工業界では特に必要な心掛けです。
良い例は、昼休み時や洗面所にある照明のマメな電源オフ、エアコンの適温管理などを行う方法です。
大規模な工場ほどスタッフの数も多くなるため、このような日常的な節電管理も難しくなります。しかし、それだけに節電効果が大きいことも期待出来ます。
2.食品加工で使用する水を節約し節電効果アップ!
食品加工プロセスでは多くの水を使用します。使用する水には常温水だけでなく、冷却水や加熱水もあります。そのため、水の使用にも電力消費を伴うことが一般的です。
こうした水に掛かる消費電力を少しでも節約することが大切です。
加熱水やそれに伴う蒸気は加工プロセス中で漏れることも多々あります。これにより、加熱に消費した電力が無駄になってしまいます。したがって、配水管をマメにメンテナンスすることが節電にも繋がると言えるでしょう。
また、蒸気を集めれば凝縮水に変わります。清潔な水ですのでボイラー加熱用に再活用するなどすれば、有効な節電対策になります。
食品加工に不可欠な排水処理設備を節電する2つの方法
食品加工工場で水を使用すると、多かれ少なかれ排水が出ます。
食品加工では排水処理にも多くの電力を消費しますので、排水処理設備の運営効率化も大きな課題です。排水処理設備の節電は、稼働時のコストパフォーマンスを高めることで達成することが出来ます。
1.「ブロア」の24時間稼働をやめて必要な時間だけ稼働する
一般的に、食品加工工場の排水処理方式には、バクテリアによる処理方式が導入されていることが多いです。このタイプの排水処理設備では、バクテリアのコンディションを高めることが機器を効率的に稼働することに繋がります。
バクテリアのコンディション改善には「ブロア」と呼ばれる酸素送風機器が用いられます。従来の方式では、24時間のブロア稼働によって排水処理能力を高めていました。
しかし、これでは無駄な電力消費が発生しやすいのです。電力の無駄を抑えるには、排水処理レベルに応じてブロア稼働時間をコントロールすることが必要です。
排水処理槽の数ごとにブロアを設置することで、必要に応じた数の稼働が可能になり、細かな節電に繋がります。
2.バクテリアによる排水処理の効率化には水温管理も重要
バクテリアを使った排水処理方式の廃水処理設備で節電するために、もう1つ忘れてはならないことがあります。それが、バクテリアの維持に重要な水温調節です。
バクテリアの活性化にはブロアによる酸素送風が欠かせませんが、廃水処理設備が24時間稼働でない場合は特に日常的な水温調整も絶対に手を抜くべきではありません。
水温は、バクテリアにとって好条件となる環境を作るために重要ですが、あまりチェックしていない工場も少なくないのが実情です。その他、バクテリア自身の呼吸速度や硝化速度なども推定することができれば、ブロアを使うべき適切な時間を知ることも可能と言えます。
食品加工工場で継続的に節電を成功させる2つのコツ
その時の努力によってある程度節電効果を上げることが出来ても、節電を継続できるかは別の話です。ここでは、継続的な節電を成功させるコツについて解説します。
1.各部門の節電対策やプロセスをしっかり管理する
食品工場での節電対策は、一部門によって進められても効果は期待出来ません。各部門の総力を挙げて取り組む必要があります。
しかし、各部門で取り組むべき節電対策やプロセスは異なりますので、各部門所属のスタッフがそれらを徹底的に理解することが大切です。
スタッフの数が少なく部門数もそれほど多くない場合、全スタッフが部門ごとの対策を理解することも出来ます。しかし、スピーディに進めるためには、経営者や管理者が陣頭指揮をしっかり執らなければなりません。
規模の大きい工場の場合、各部門で長期勤務前提のスタッフに節電対策やプロセス管理を委ねる方法がベストです。
⇒工場の節電を成功させる2つのポイントとケース別に見る注意点
2.大規模な工場ほど管理が難しい!節電の標準化を徹底する
規模の大きい工場では、製品の品質管理と節電を同時に行うのが無難です。
つまり、品質管理手順を確実に守って業務を進めながら、自然な形で節電達成も可能な状態にするということです。食品加工業界は人材の流動性が高いため、節電管理者にすべての管理を担わせる方法は非効率的です。
人材が変わっても品質維持をしながら節電も出来るようなプロセスを各部門で作っておけば、継続的に手間のかからない節電が可能になります。
食品加工産業で節電するには、安全管理とのバランスや、人材などの課題もあります。こちらでご紹介した方法を少しでも参考にして頂き、品質の安全を維持しながら賢く節電も実践していきましょう。