工場の熱機器や水処理設備を節電する方法
工場での製造工程は様々ありますが、熱を加えて水を処理する工程は多くの業界で共通する工程です。ただ、このようなエネルギー処理に必要不可欠な電力を節電するとなると、難しいケースも多いと言えます。
ここでは、熱機器や水処理設備といった、エネルギー伝達機器の節電ポイントを解説します。また、エネルギー処理関連設備の節電が難しい具体的な理由も見てみましょう。
工場にあるエネルギー処理関連設備を節電する2つの方法
一般的に、工場ではエネルギーを常に使い続けなければなりません。節電をするためには、余分なエネルギーも含め最大限利用することが重要です。
1.熱エネルギーの損失防止が重要な節電ポイント!
熱エネルギーは、加工や成型で用いられる加熱炉、そして製品の保温や乾燥に使われる乾燥炉などに使用されます。これらの熱機器は、熱をいかに多く伝達出来るかがポイントです。
製造量によっては、実際の製造活動に消費されない無駄な熱、つまり熱損失がかなり大きくなってしまうこともあります。
利用される熱に消費される電力量は同じでも、熱損失が生じればそれだけ電力消費の無駄が発生することになります。この熱損失を少なくするすることが、熱機器を節電する最大のポイントと言えます。
また、一定の熱を効率的に維持できる高性能な熱機器であっても、乾燥炉などでは熱伝達にムラが出ることもあります。その結果、ムラを解消するために無駄な熱を消費することも多くなります。この点も見落としがちな節電のポイントです。
2.水処理量が多い時間帯とそれ以外の時間帯で臨機応変に節電!
工場の製造段階で生じた廃水については規制が厳しく、工場内にて処理、排出しなければなりません。
廃水の処理方法は各工場によって大きく異なります。しかし、多くの工場で共通している点は、常に水処理が発生しているということです。
また、処理量の多い時間帯とそうでない時間帯が存在する工場も多いです。そのため、時間帯によって処理設備を臨機応変にコントロールする戦略的方法を構築することが節電の大きなカギとなります。
熱機器の具体的な節電ポイントをチェック!
ここからは、機器ごとに具体的な節電ポイントを見ていきましょう。最初は熱機器の事情について解説します。必要な熱を確保しながらも最低限の電力消費に抑えるには、最新機器を導入する方法が良いでしょう。
省電力ヒーターを活用し、余分な加熱を削減
熱機器の熱損失が最も出やすいのが、加熱時です。
作業時間の関係上、加熱を必要以上に強くしてしまうことも多いものです。加熱を必要以上に強くしてしまうと、作業効率そのものは良くなったとしても、本来必要な熱量より大幅に使用してしまいます。
そんな時に役立つのが、省電力ヒーターによる加熱です。通常の加熱ヒーターの場合、温度センサーで加熱温度を調整していますが、温め過ぎという問題がありました。
それに対し省電力ヒーターは、発熱体の体積抵抗率が温度によって変化することで電流を自動的に制御するため、この自己制御機構により温め過ぎという問題がなくなります。余分な加熱をコントロールすることで、約50%もの節電に繋がる事例もあります。
⇒工場の節電を成功させる2つのポイントとケース別に見る注意点
排熱の再利用でさらに節電効果を高める!
加熱炉など熱機器の熱損失を減らすために断熱素材を利用し、機器全体から熱が逃げない仕組みにすることで、節電効果を得られます。また、熱機器から出る排熱を無駄にせず、再利用することでさらに無駄を省くことも可能です。
したがって、加熱炉など熱機器の節電には、断熱強化・排熱再利用が重要なポイントと言えます。
水処理設備の具体的な節電ポイントをチェック!
ここからは、水処理設備に関する具体的な節電ポイントをご紹介します。現在工場に導入されている水処理設備は、「生物処理」による方式であることが多いのではないでしょうか。
水処理設備の効率運用を考慮した場合、処理媒介となってくれる「微生物」の活性化は欠かせません。そのため、水処理設備の節電時には必ず微生物のために送風循環を行い、設備の質を高めることが必要です。
排水負荷のパターンを見極めて水量に応じた機器の導入を
先述した、微生物を活性化してくれる送風設備の電力消費は決して少なくなくありません。水処理設備運用に消費される電力のうち、4割を占めるケースもあります。
また、水処理の際に必要なポンプなども水処理設備に消費される電力のうち2割を占めるケースもあり、ランニングコストがかなり高いことが分かります。
そのためここで非常に重要になるのが、廃水処理に関する負荷を見極めて、その水量に応じた機器を導入することです。水量を考慮しないで導入してしまうと、不必要に機器が稼働する時間が多くなり、待機電力が無駄に消費されてしまいます。
また、送風設備は汚れが溜まりやすいです。処理水量が多くなると汚れもより早く溜まりますので、日ごろからの手入れを怠らないようにしてください。
できるだけ出力の小さいポンプを複数台導入して節電効果アップ
水処理の際に必要なポンプは、出来る限り出力の小さいポンプを複数台導入し、水処理量に応じて稼働を調整しましょう。
例えば100kW出力のポンプを1台導入している場合は、50kW出力のポンプを2台設置した方が電力消費を少なく出来る可能性が高いです。時間帯によって水の処理量が大きく異なる状況下では、その量に応じて稼働するポンプの台数を絞ればより高い節電効果が得られるでしょう。
水処理量の多さによって異なる出力のポンプを組み合わせることも効果的です。さらに、将来的には収益の増減によって低出力ポンプの設置増減を検討すると良いでしょう。
エネルギー処理関連設備の節電が難しい2つの理由
工場にあるエネルギー処理関連設備の節電をするには、既に述べて来たように事細かな工夫が必要です。
これらのポイントをコントロールするのは、かなり難しいケースも多いです。ここでは、エネルギー処理関連設備の節電が困難な理由について解説します。
1.大工場ほど高出力の機器を導入し、無駄な電力が生じやすい
大きな工場ほど、将来的なニーズを考慮し、出力が高い機器を導入する傾向にあります。工場の新規立ち上げ時から高出力の機器をいきなり導入するので、将来的に製造量がかみ合わない場合はエネルギーの無駄が出やすくなってしまいます。
しかし、高出力機器を低出量機器に戻すのは、コストもかかりますし非現実的です。よって、大きな工場であればなおさら、低出力の機器を複数台導入して調整する方法が便利です。しかし、運用実態を考慮するとそのような考え方にはなかなかなりにくいのが現状です。
一方で、小規模な工場では、現実的に規模にあった設備を導入することが多く、結果的にエネルギー処理関連設備を節電、コントロールすることが比較的容易になっています。
2.室内環境の維持などにも長時間エネルギーが消費されている
エネルギー処理関連設備の節電が困難なもう1つの理由は、製造以外にも室内環境の維持などにエネルギーが長時間利用されることです。
製造活動だけであれば強制的にコントロールができるかもしれません。しかし、企業内の日常活動を制限するとなると、たとえ節電が実現出来ても工場全体の業務効率を落とすことになりかねません。
特に海外の拠点は、日本国内にある拠点以上に大規模な工場も多いです。稼働時間が長いことも多いため、エネルギー処理関連設備による節電を達成することはより困難となります。
こうした理由から、工場にあるエネルギー処理関連設備を節電するのは難しいのも事実ですが、低出力機器や最新機器の導入、排熱の再利用によって工夫することも可能です。
効果的な節電を進め、工場の収益アップに繋げましょう!