製紙産業

メーカーのほとんどが実践している「節電」ですが、その中でも先進的に節電を推し進めているのが製紙及び繊維産業です。製紙及び繊維産業は、他の業界よりも早期から節電対策を打ち始めました。

今回は、製紙及び繊維産業が節電をスムーズに達成している理由や、2つの業界それぞれで実践されている具体的な節電対策について解説します。

製紙及び繊維産業が先進的な節電を進めていると言われるのはなぜ?

製紙業界や繊維業界は、高度経済成長期の日本ではドル箱の産業でした。しかし、バブル景気の終焉以来、それまで安定していた業界も不安定になり、それは製紙及び繊維産業も例外ではありませんでした。

ここでは、製紙及び繊維産業が早めに節電対策を打たなければならなかった経緯や事情について解説します。また、節電対策において先進的な業界へ発展した経緯も見てみましょう。

90年代から始めた環境対策が先進的な節電に繋がった

バブル景気が終わった90年代前半から、製紙及び繊維産業は抜本的な体質改善を迫られました。どの企業も経費節減のために紙類のコストを削減し、さらに90年代後半にはパソコンが普及したことにより、製紙及び繊維産業は大きく影響を受けて減収となったからです。

そのため、90年代から製造に使用していた石油の費用を削減しています。早期から自家発電をスタートさせ、エネルギー購入費用を抑えたのです。

化石エネルギーを使用しないことは環境対策にも繋がり、その結果、先進的な節電を推し進める業界へと発展しました。

価格競争激化が業界内の節電意識をさらに高めた

日本では90年代後半から生産拠点を海外に移転する流れが強まりました。いわゆる雇用の空洞化が始まった時期です。

製紙及び繊維産業も低コストに抑えられる東アジアや東南アジアエリアに製造拠点を立ち上げるケースが増えました。また、品質を保ちながらも価格を下げる方法を各企業が模索し始め、価格競争が生まれました。

この価格競争は現在に至るまで激化しており、本来利益率が高かったこれらの業界も危機感はより一層高まりました。先述した環境対策をはじめ、工場の各種経費を削減する一環として節電意識も急速に高まったのです。

現在、海外製造拠点の人件費も高まっており、製造コストは90年代とは桁違いに高くなっています。そんな今、培われた節電意識の高さが業界内で大いに役に立っているのです。

製紙業界で行われている先進的な2つの節電対策

製紙業界

さて、ここからは2つの業界ごとに節電事情を見ていきます。まずは製紙業界ですが、繊維業界と比べ、さらに先進的な節電を進めています。

製紙プロセスは無駄な副産物が多く出ていましたが、粗利の高さから意に介さない時代もありました。しかしバブル終焉以降の20年、製紙業界は効率的で無駄がない節電方法を構築しつつあります。

⇒工場の省エネに取り組む4つのポイントと優先順位

1.製紙工程で生成される黒液内の「スラッジ」を省エネで凝固化

製紙プロセスでは、製造過程で発生する不要な液体、つまり廃液が出ます。廃液はその色から「黒液」と呼ばれることも多いです。黒液は元々、燃料として再利用されていました。

しかし、黒液には「スラッジ」と呼ばれる固形雑物が混じっており、これを取り除く必要があります。

取り除いたスラッジは焼却処分しますが、水分が多いとスラッジの燃焼効率が悪くなり余計な燃料を使ってしまいます。それを防ぐために、以前は熱源によりスラッジを乾燥させていました。

しかし、スラッジの乾燥時に発生するエネルギー消費を抑える必要があるため、自然乾燥によりスラッジを凝固させ燃焼しやすくする方法に切り替えました。その結果、省エネを達成しながらもスラッジの凝固化が可能になったのです。

2.省エネ分の熱源を使って自家発電に回す

先述した方法により、本来使用していた熱源を自家発電に回すことも可能になりました。その結果、従来の消費電力と比較して1割以上の節電効果が上がっているとされています。

今は再生可能エネルギーによる発電が推進されていますが、かつては電力の安定供給とコストを削減するためだけの発電方法という認識が強くありました。

しかし、製紙業界では「黒液」をエネルギーとして活用するという考えが比較的早期に生まれていたのです。

さらに、黒液から出るスラッジも吸着材として化学製品に再活用される流れもあります。これにより、製紙業界では総合的な環境対策も可能になってきています。

繊維業界の節電対策と早期解決が望まれる課題

繊維業界

次は、繊維業界の節電事情を見てみましょう。

繊維業界も90年代からの長期的な化石エネルギー削減が功を奏し、高い節電効果を誇る業界になっています。

ただ、新興国にある後発繊維メーカーの品質アップなどが原因で、製紙業界よりもさらに競争が激しくなっています。ここでは、繊維産業が行う節電対策や、抱えている課題などについて解説します。

コジェネレーション導入で電力による熱を再利用!

繊維業界でも、90年代初めから化石エネルギーの積極的な削減を行っています。約20年弱に渡る節電状況を見ると、従来の消費電力から約2割の節電に成功しているとされ、充分高い効果が得られています。

また、繊維業界では「コジェネレーション」と呼ばれる熱リサイクルを製造プロセス中に大々的に活用しているケースも多いです。これによって工場全体の省エネが促進されています。

コジェネレーションは、消費電力から得られる熱エネルギーを上手に集めて、工場内の空調や水の加熱に再活用する仕組みです。

ある程度の電力消費だけで、その他ガスなどのエネルギーを使わずに熱エネルギーを生み出せる画期的な省エネ法です。

⇒工場のコスト削減に大きく貢献する製造機器の節電ポイント

炭素繊維製造に消費されるエネルギーの多さが課題

そんな製紙産業の節電にも不安材料が全くない訳ではありません。

繊維産業において収益性が高い素材の1つに「炭素繊維」があります。炭素繊維は、製造段階で高温による熱処理が施されます。

この際、一般的に鉄鋼に用いる熱エネルギーの10倍ほどにも上るエネルギーを消費します。そして、これが炭素繊維素材の価格競争力に悪影響を及ぼしています。

つまり、炭素繊維製造に消費される電力の高さが、繊維業界における節電の大きな足かせとなっているのです。

繊維業界では炭素繊維製造に消費されるエネルギーが、優秀な素材である炭素繊維の普及に影響しかねないと考えられています。そのため、業界内では早急に解決すべき課題として捉えられています。

製紙及び繊維業界は発電による売電収益化も有利!

多くの工場で導入されている自家発電は、最近は特に再生可能エネルギーによる発電がメインになっています。現在は国による電力買い取り、いわゆる売電事業もあるため、多くの工場が収入源の拡充として発電設備を導入しています。

製紙及び繊維産業では、発電による売電収益化も他業種工場と比較して有利に進めやすいといえます。ここでは、その背景について解説します。

製紙及び繊維産業は収益のために発電しているわけではない

製紙及び繊維産業で進めている発電及び売電は、収益アップを1番の目的としているわけではありません。

製紙及び繊維産業では、国の再生可能エネルギーによる電力の買い取りがスタートする遥か前から、自家発電による電力リスクの分散を始めていました。この業界では、節電は単なるコスト管理の1つではなく、生き残りを懸けた大きなテーマでした。

そのため製紙及び繊維産業では、他業界の後発工場に多く見られるような営業外収益の拡充を目的とした自家発電を行っているわけではありません。

競争力を高めるための節電が、結果的に後年売電事業として収益が発生し、さらなるメリットを生み出したに過ぎません

⇒どちらがお得? 太陽光発電で全量売電 VS 産業用蓄電池で自家消費

小規模工場でも発電モチベーションが高い

かつては主に規模の大きい工場が自家発電を取り入れていましたが、現在は補助制度もあって小規模な工場も発電設備を導入するケースも多くなりました。

製紙及び繊維産業の場合は、小規模工場でも他業界と比べて積極的に発電設備を導入する傾向があります。業界内の突出した節電意識の高さが、結果的に発電のモチベーションも高めています。

また、工場内の日常的な節電(照明、エアコン、OA機器など)も製紙及び繊維産業では上手にコントロールできるケースが多いです。そのため、節電目的を達成した上で売電できるほどの収益性を生み出しています。

製紙業界や繊維産業では、バブル崩壊後の90年代後半から既に節電対策を始めており、効果的な節電により売電収益化においても有利だということが分かりました。

こうした手法を他業界でも参考にすることで、効率的に節電を進める助けになるでしょう。

製紙及び繊維業界の節電方法を参考に+電力会社見直しで効果的に節電!

早期から節電対策を始めた製紙及び繊維産業は、多くの節電ノウハウを蓄積しています。こうした節電対策を参考に、より効果的な節電を行いましょう。
ただ、節電によるコスト削減も電気料金プランが適切でないと最大限の効果を発揮することが出来ません。電力会社切り替えで、20%以上も電気代削減できるケースもあります。
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