電子産業では電力消費効率化が最大の節電対策に
電子産業は80年代当初、限られたメーカーのみが扱っていたこともあり、高い収益性を誇っていました。しかし、製造と販売がグローバル化すると状況が一変し、海外メーカーも含めた競争激化に陥ります。
そうした影響もあり、コスト削減に向け製造時の電力消費効率化が重要視されるようになりました。
今回は、電子産業の節電事情と対策方法について解説します。
電子産業における節電の意義と主な対策方法
電子機器製造では、実に多くの工場が節電を実践しています。
ここでは、電子産業における節電の意義や傾向について詳しく見ていきましょう。
電子産業における品質の伴わない節電は命取りに
電子産業の節電で欠かすことができないコンセプトは、「品質が伴った節電」です。電子部品は、良くも悪くも節電が品質に大きく影響します。 電子部品は、機器の内部に組み込まれることがほとんどです。そのため、パーツに不具合が起こると製造活動に支障を来す事態にも発展します。
そうなるとメーカーは経営上大きな打撃を受け、命取りになる可能性もあります。 電子産業で行う節電はリスクを抱えることもあるため、慎重な電力消費の効率化が必要といえます。
製造機器による節電効率化で継続的な節電を!
電子機器の製造時における節電は、製造スタッフの努力も必要ですが、それよりも製造機器による節電を重点的に進める方がスムーズです。
同じく節電対策が難しいとされる食品加工産業では、製造プロセスによってはスタッフによる手動操作が節電効果に影響する可能性もあります。 しかし電子機器の製造は、製造機器によって行われることが多い事を忘れてはいけません。
そのため、機器による節電効率を高めれば継続的な効率化の維持も容易になります。 製造機器による節電対策は、機器自体との相性も大きく関係します。機器ごとの節電対策を確立することが出来れば、製造スタッフが入れ替わった場合でも管理がしやすいのです。
電子産業に重要なクリーンルームの節電対策
電子産業での製造活動時に必要不可欠なのが「クリーンルーム」です。クリーンルームとは、空気中にある塵などの微粒子が極めて少ない部屋のことです。
ホコリ1つが品質に影響を及ぼしかねない電子産業では重要な存在でしょう。 しかし、製造スペースのクリーニングに使われるエアは相当量が必要で、ホコリをシャットアウトするのに必要な電力消費量も多いです。
ここでは、クリーンルームの節電対策について詳しく解説します。
クリーンルームの設計と運用にメリハリを付けて節電!
電子機器製造に使用されるクリーンルームは、以前はクリーニングに必要なエアの出力が部屋内で均一でした。 しかし、製造スペースが広い場合、ホコリが多い部分と少ない部分に関係なく同等の電力を消費してしまうため、コスト的に無駄が出やすい状態でした。
そのため現在は、ホコリや不純物が絶対に付着してはならない機器の局部周辺では、強力なクリーニングを行う仕組みを設計当初から導入している工場も増えています。 この方法であれば、クリーンルーム全体で効率的なエアによるクリーニングが可能になり、節電に繋がります。
そのため、ウェハーのような重要パーツを扱う製造機器周辺のクリーニング運用に掛かる電力消費を多くすることも可能です。
クリーンルーム以外の衛生対策も徹底して節電効率を高める
クリーンルームの長期的な節電を考えた場合、ルーム内の衛生設備だけに頼る方法は決して褒められるものではありません。
一般的に、製造現場ではスタッフが入室する際、身体に付着しているホコリの処理が行われます。しかし、入室以前の各スタッフの衛生状態に大きく差があるケースも多く、結果的にホコリの処理にも差が出てしまいます。 スタッフの行動パターンはもちろん、ライフスタイルもそれぞれ異なるため、日常的な衛生意識に差があるのは仕方がないことです。
そのため製造現場の入室前だけでなく、オフィスや更衣室でも衛生管理が必要です。衛生管理を徹底することで初めて、クリーンルームの節電を含めたコスト削減が期待できます。
電子産業のめっき処理プロセスで節電する方法
次に電子機器の製造に欠かせないプロセスとして、「めっき処理」が挙げられます。めっきはパーツに高級感を与えるだけでなく、パーツの防錆性や耐摩耗性、電気伝導性を高めるなどに使われます。
めっき処理における節電は収益にも影響を及ぼす可能性があります。その実態を見ていきましょう。
めっき槽に送った電力の損失を減らす
めっき処理には多量の電力を消費しますが、めっき処理で節電するために注目すべきポイントは電力の損失です。
めっき槽への電力伝達に利用する「ブスバー/母線」において、電気伝導性の高いブスバーであっても電流が大きいために電力損失は大きく、また、ブスバーとめっき処理の電極の接触抵抗による損失もあります。
電力の損失を少なくすることができれば、同じ電力消費でもめっき処理効率が上がって節電効果が期待できます。例えば、電源装置本体をめっき槽に近付け、ブスバーを短くすることで電力損失を少なくすることが可能です。
節電のためには電力損失を減らすように心がけましょう。
⇒工場の節電を成功させる2つのポイントとケース別に見る注意点
製造量が増えるほど節電効果がより高くなる
めっき処理は、製造量が増えれば増えるほど電力消費も増える仕組みになっています。 しかし、先述したような方法で節電を進めることができれば、製造量が増えるほど節電量も大きくなることが期待できます。
先述した電源装置をめっき槽に近づける対策により、従来と比較して消費電力を2割程も削減できた事例もあります。そのため、めっき設備の配備台数が多ければ非常に大きな節電効果が期待できると言えるでしょう。
電子産業で照明や空調を効果的に節電する方法
電子産業の国内外における製造拠点では、そのほとんどで海外輸出を目的とした製造を行っています。そのため、24時間稼働している場合がほとんどです。
製造拠点では製造機器が消費する電力以外にも、照明や空調にも相当量の電力を消費します。
ここでは、電子産業で空調と照明の節電をする方法について解説します。
空調の温度変化レベルを見極め電源オフの時間を設定する
電子製品の製造工場では、空調の温度設定も低くなりがちです。照明の場合と同様、部署ごとに空調を継続的に稼働させるのか、一時的にストップさせるのかを考慮しなければなりません。
夏場は日中の工場稼働時に冷房空調が必要不可欠ですが、工場の立地によっては午前から午後にかけての室温がそれほど上昇しないケースもあります。 昼休みまでに室温上昇が1℃に満たない場合、午後は空調の電源をオフにし、午前中までの冷気で過ごすことも可能です。
しかし、健康管理を目的とした換気のために空調を稼働する場合もあります。そうした空調稼働には制限を掛けないなどの配慮も忘れないようにしましょう。
照明スイッチの独立部分を上手く活用して節電
一般的に電子産業の製造現場では、通常の照明よりも照度が高いタイプが採用されるケースも多いです。しかし、必要以上の明るさになっている工場も多く存在します。
しかし、工場内の全部署で照度が高い照明が必要とは限りません。業務内容にマッチした適度な照度を持つ照明器具を採用すべきです。
また、製造スペースやオフィスに多く見られるのが、照明電源を一括管理しているケースです。 必ずしもスタッフが出勤若しくは常時着席しているとは限らないため、一括電源で照明を運用すると必要以上の電力を消費することになりかねません。
高効率の蛍光灯やLEDを導入することはもちろんのこと、電源が独立化した部分も作ることで大幅な節電効果が期待出来ます。
電子産業の節電対策では、品質が伴った節電が大切です。ご紹介したような節電対策を行い、品質を保ちながら上手に節電を進めコストパフォーマンス改善に繋げましょう。