高性能ボイラの2つのメリットと高まるニーズとは?
ボイラには温水や熱水を生成するためのものだけではなく、動力エネルギーとしての蒸気を作るボイラも存在しています。現在、製造業分野などでは大量の処理作業が求められるようになってきています。
そのため、環境負荷低減や省エネ効果でコスト削減を考える意味でも、それに対応できる高性能ボイラの需要が高まってきています。
高性能ボイラは、二酸化炭素の排出量削減とバーナーの蓄熱を利用することができるため、省エネができるといったメリットがあります。こういったメリットからニーズが高まる高性能ボイラについて詳しく解説していきます。
メリット1.高性能ボイラはガス焚きで熱効率が良い!
最近、高性能ボイラでは、電気、油、その他(一般炭、コークス、他)がある中で、ガスが主流になってきています。
ガスボイラのニーズが高くなった要因としては、圧倒的に二酸化炭素の排出量が少なく、熱効率が非常に高い性質があるので作業効率も高いことが挙げられます。
石油ボイラなどは熱効率がとても高いですが、石油の燃焼過程で大量の二酸化炭素を排出せざるを得ず、石油燃焼の際に廃棄されるガスによって汚れることが多くフィルターの交換などが必須となります。
一方ガスボイラでは、二酸化炭素を全く排出しない訳ではないのですが、石油ボイラと比較すると少なくとも3割は排出削減が可能です。また、石油の貯蔵設備が不要になることでボイラの簡素化がはかれます。このことから、高性能ボイラの主役としてガスが注目されるのは当然のことと言えます。
ガスボイラが二酸化炭素を排出しにくいのは、蒸気をメインに排出するからです。さらに熱効率も石油に負けずに高く、機器の立ち上がりも速いメリットがあります。
メリット2.高性能ボイラは国からの補助金を使って導入ができる
高性能ボイラは、銭湯、ホテル、工場、飲食店、病院などで幅広く導入されてきています。
従来のボイラと比べて低いエネルギーで加熱ができることから、省エネ機器として国で指定されており所定の条件を満たすと国のエコ事業向け補助金を使って導入できることもあります。
ここでは、どのような補助金を使うことができるのかその概要をチェックするとともに、補助金申請のために進めるべき手続きを見ていきます。
中小の省エネ・生産性革命投資促進事業費補助金で対応可能
年に数回、インターネットで公募があります。
公募期間中に公募に関する書類を申請して申込をします。
同じ事業者が何度も申し込むことはできませんが、事業所が異なれば申し込むことは可能です。
補助対象になる事業者 |
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国内で事業活動を営んでいる個人事業主か法人 |
設置する補助対象設備の所有者であること |
法定耐用年数の期間中、導入設備を継続的に維持運営管理できること |
設備の使用状況や事業効果に関して国に協力できること |
経済産業省から補助金などの停止措置などがないこと |
補助対象となる事業者 |
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国内で事業活動を営んでいる施設において設備の更新や新たな設備導入を考えている |
既存の設備を更新することで省エネ効果が期待できる |
事業終了後、1カ月の省エネルギーの実績値をベースに1年間の省エネルギー量をを計算して90日以内にSIIへ成果報告をする。 |
SIIから要請が合った場合、事業交付申請や成果報告内容を公表できること。 |
SII=一般社団法人環境共創イニシアチブ
補助率 |
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購入する補助対象費の1/3以内 |
補助金上下限度額 | |
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上限 | 1事業者あたり2億円 |
下限 | 1事業者あたり50万円(中小企業、個人事業主は30万円) |
申請は、Webサイトの「補助事業ポータル」を使用します。
問い合わせ |
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一般社団法人 環境共創イニシアチブ |
中小企業等の省エネ・生産性革命投資促進事業費補助金 |
補助金の申請に関するお問い合わせ窓口 |
TEL:0570-783-755(ナビダイヤル) |
IP電話からのご連絡 TEL:042-303-1533 |
受付時間:9:00〜17:00(土曜、日曜、祝日除) |
環境・エネルギー対策資金で対応可能
日本政策金融公庫でも、中小企業向けに貸付してくれます。
利用対象者は、高性能ボイラー設置の設備資金を必要とされている方になります。
融資限度額(直接貸付) | 7億2千万円 |
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融資限度額(代理貸付) | 1億2千万円 |
設備期間 | 15年以内(2年以内が据置期間) |
直接貸付 | 日本公庫中小企業事業窓口 |
代理貸付 | 公庫の代理店窓口 |
相談センター | 0120-154-505 |
高性能ボイラは具体的にどんなタイプが存在している?
高性能ボイラには、4種類あります。
それぞれの特徴を見ていきましょう。
炉筒煙管タイプボイラ
炉筒煙管タイプボイラですが、ガス燃焼の際に生じた排ガスがボイラ内で煙管を通るたびに水を加熱する方式です。大量の水を扱うことができますが、排ガスの多さがデメリットとなります。
水管タイプのボイラ
水管タイプのボイラですが、これはガス燃焼の排ガスが出さずに、ボイラ内の水を水管によって循環させて加熱するタイプになります。煙管式同様に多くの水を扱えますが、水を循環しなければ過熱にムラが出るので加熱自体に時間がかかります。
貫流型タイプのボイラ
熱容量が小さいため負荷変動に対する対応性が高く、給水中にボイラーから不純物が本体に運ばれやすいので給水処理を十分に行わなくてはなりません。そのため、純度の高い水が必要になります。
このタイプはその都度給水して、その都度加熱する方式になりますので加熱速度が著しく早い半面、少量の水しか扱えません。
廃熱タイプのボイラ
各炉で発生する廃熱を回収しながらエネルギーとしてリサイクルします。廃棄した熱を有効利用するため、コスト削減、CO2の排出量の削減につながっています。
高性能ボイラを導入する場合の費用はどれくらい?
ボイラはすでにご紹介したように、複数のタイプに分かれているので費用も一定しないのが大きな特徴になります。ここでは、具体的に本体価格をチェックしていきましょう。
貫流型ボイラ
株式会社サムソン新型機EB-160N 価格:(オープン価格129万円)
クリーニング店や工場まで幅広く利用されています。
水管タイプのボイラ
株式会社日本サーモエナーEQO-2000KM 価格:(オープン価格917万円)
主に工場など企業で利用されています。
数十万円から数百万円レベルまで導入費用も幅広い
上記を見ると分かるように高性能ボイラも家庭用のメジャーなタイプを含めればかなり幅広く、導入費用もピンからキリまであります。家庭用の大変コンパクトなものになると、数十万円で購入できます。
しかし、家庭用でも容量がかなり大きい事業用に近いものになると100万円前後するものも出てきます。これは1時間当たりの加熱処理能力によって大きく変化し、1時間に5000L以上処理できるような超大容量タイプになると数百万円に上ることもあるでしょう。
また、日本ではボイラ取り付けのための工事費が業者によって大変流動的なので、思わぬ導入費用のかさ上げを招いてしまうリスクもあります。そのため、高性能ボイラで大型のものを設置する場合には、トータルでの安さとサポートの充実などを考慮して業者選びを進めてください。
高性能ボイラによる日本経済への影響とは?
日本は特に小型の高性能ボイラについて高い技術を持っていますので、その普及は日本経済へより良いメリットをもたらしてくれます。ここでは、日本への経済的なメリットを具体的に検証します。
低迷する国内インフラ需要を海外からのオーダーで調整可能
先の東日本大震災など、インフラ需要が著しく高まった際にボイラの売上増がありました。しかし、基本的に日本ではインフラ需要は毎年低下していることもあり、相対的なボイラ需要も年々減っていくばかりです。
そのため、国内におけるボイラの販売は頭打ちまでは行かなくても、今後の需要の掘り起こし自体が難しい状況になっています。そのため、まだ高性能ボイラの普及していない海外エリアに対して販売をかける意義が大きく、特に東南アジア国家での需要市場は潜在的にかなり大きいと見られています。
特に都市ガスは開発途上国では整備されていないことも多いので、今後の営業展開によっては爆発的に需要が高まることも考えられます。こうなれば、日本での需要を海外オーダーで調整することも可能になってきます。
サイズを問わない高性能ボイラは海外での優勢を高める
日本メーカーの持つ高性能ボイラ技術の優位性は、基本的に小型のものに対して最も影響力を発揮しています。もし、これがサイズを問わずに多くのボイラにて技術的な進歩を達成できれば、日本の高性能ボイラは海外の市場にてかなり大きな優位性をつかむことが可能になるでしょう。
ただ、日本の高性能ボイラは海外のものと比べると価格がまだまだ高く、欧米製と比較すると価格優位性はかなり低いのが現状です。しかし、国内販売と異なって税金の問題がなくなりますので、ある一定レベルまで製造コストを下げることができれば環境面の優位性にて日本の高性能ボイラが業績を上げることは不可能ではありません。
また、日本と海外とは水質も異なりますので、海外の水質に合わせた仕様の高性能ボイラを現地向けにカスタマイズできればより一層日本のボイラが受け入れられるようになると思われます。