RPS制度はなぜ「段階的な廃止」と決定されたのか?
RPS制度とは?
RPS制度の概要
RPS制度(Renewable Portfolio Standard)とは、新エネルギー等を電源とする電気の一定割合以上の利用を義務づける制度であり、「電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措置法」に基づき、エネルギーを安定的かつ適切に供給するため、電気事業者が守らなくてはならないもので、2003年4月1日に施行されました。(再生可能エネルギー特別措置法の制定によって、2017年度から段階的な廃止が決定)
日本が排出する温室効果ガスのうち、エネルギー(石油・石炭・液化天然ガス等)起源のCO2が9割を占めており、電気事業者が一定以上の新エネルギー(再生可能エネルギー)を使用することにより、こうした環境保全にも寄与する狙いがあります。
つまり火力や原子力といった従来の発電システムの比率を下げ、再生可能エネルギーの使用率を向上させることを義務付けた法律と言えるでしょう。
対象となるエネルギー
- 風力発電
- 太陽光発電
- 地熱発電
- 中小水力発電(1000キロワット以下)
- バイオマス発電
RPS制度導入の経緯
RPS法が施行された2003年当時、日本の石油依存度は依然として高く、また原子力発電についてもその危険性が取り沙汰されていました。そんな中、風力・太陽光等の新エネルギーの利用を促進し、エネルギーの多様化を図ることは緊急の課題だったのです。
期待されるメリット
1つ目はRPS制度の施行によって、再生可能エネルギーの使用量が増加することが期待されていました。それは同時に火力・原子力発電の依存度を相対的に下げることにも繋がり、環境保全への貢献となるのです。
2つ目は各電気事業者がこぞって再生エネルギーを使用することにより、市場原理が働き、再生可能エネルギーの発電設備(風車など)の価格が下落することが期待されます。
これにより収益性の高い技術が開発され、さらなる普及の促進に繋がるのです。
3つ目のメリットは地域ごとの発電環境の格差が小さくなることです。後で述べますが、電気事業者がRPS制度を遵守する方法のひとつに、再生可能エネルギーを購入するという方法があります。
例えば、湖が存在せずダムの建設が困難な地域において水力発電は困難となりますが、RPS制度に従い他社から再生可能エネルギーを購入することで、どんな事業者でも再生可能エネルギーの普及に貢献することが可能になるのです。
制度を遵守するために電気事業者が負うべき義務
販売する電力の量に応じて、一定割合以上の再生可能エネルギーを用いることが義務付けられています。
基準利用量とは?
電気事業者が当該年度に利用を義務付けられた新エネルギー電気量のことを言います。
計算式
事業者の電気供給量(前年度)×利用目標率(当該年度)※1
※1 利用目標率=全国の基準利用量(当該年度)÷全国の電気供給量(当該年度)によって算出
電気事業者の種類
一般電気事業者・特定電気事業者・特定規模電気事業者の3つが存在します。3者とも履行の義務は同一です。
一般電気事業者
一般の需要に応じて電気を供給する事業を営むにあたり、経済産業大臣の許可を受けた者のことを指します。
特定電気事業者
特定の供給地点における需要に応じて電気を供給する事業を営むにあたり、経済産業大臣の認可を受けた者のことを指します。
特定規模電気事業者
電気小売りが一部自由化された際にガス会社や商社等によって設立され、経済産業大臣の認可を受けた者のことを指します。ソフトバンクのCMなどでご覧になったことのある方も多いかも知れません。
RPS制度の義務を履行する方法
- 自ら発電した新エネルギー
- 他社から購入した新エネルギー
- 電気とともに購入した新エネルギー電気相当量
- 正当な理由と認められた不履行分
上記4点で基準利用量を上回っている必要があります。
「正当な理由と認められた不履行分」とは?
個別に判断されるというのが基本ではありますが、以下の3つは確実に認められるとされています。
バンキング
前年度以前、義務履行に充てなかった新エネルギー義務超過量のことです。義務超過量を次年度の義務履行に充てることができます。「バンキング」という名前から連想できるように、銀行に預けておいた新エネルギーを口座から下ろすといったイメージでしょう。
電気料金の上限価格
新エネルギーが11円/kWhを超える価格になった場合には、やむを得ない事情があったとみなされ、新エネルギーの調達を免除されます。
ボロウイング
翌年に繰り越される未達成量のことです。当該年度、義務量に届かなかった新エネルギー利用量を、20%を上限とし、翌年に繰り越すことができます。ただし、翌年度は通常の義務量に加え、ボロウイング分の新エネルギーも利用しなければなりません。
RPS制度で定められた義務を履行できなかった時の勧告・命令・罰則
勧告の発動基準
電気事業者による新エネルギーの電気使用量が基準利用量より少なく、さらに上記の「正当な理由」としても認められなかった場合、経済産業大臣はその電気事業者に新エネルギーを利用するよう勧告することができます。
命令の発動基準
「勧告」を出しても改善がなかった場合、経済産業大臣はその事業者に新エネルギーを利用するよう命令を出すことができます。
勧告・命令に違反した際の罰則
経済産業大臣からの「命令」にも関わらず、それに従わなかった場合、100万円以下の罰金が科せられます。
RPS制度の課題と今後の展開について
RPS制度が抱える課題
- 導入目標が低すぎて、逆に再生可能エネルギー導入の妨げとなってしまっている
- CO2削減の金銭的負担などを電力会社に押し付けている
- 電力の需要と供給のバランスは時間帯によって異なり、それとともに電力の価格も絶えず変化し続けるにも関わらず、RPS制度ではそういった事情が顧みられていない
- バンキングやボロウイングのせいで、目標に届かないことが事実上認められてしまっている
RPS制度の今後について
以上のような問題点が多く指摘されていたこともあり、先に述べたようにRPS制度は2017年度から段階的に廃止されていくことが決まっています。1年ごとに再生可能エネルギー使用の義務量を減らし、2022年の義務量は0キロワットとなる見通しです。
だからと言って、再生可能エネルギーの普及拡大が諦められてしまったわけではありません。2011年の東日本大震災で起こった福島第一原発の放射能漏れなどをきっかけに、当時の菅直人首相はRPS制度から「固定価格買い取り制度」への移行を掲げました。
「固定価格買い取り制度」とは、電力会社に再生可能エネルギーの買い取りを義務付ける法律です。
しかしながら同制度においても、買い取り価格が高すぎるといった声が電力会社からちらほら出るなど、課題がないわけではありません。
いずれにせよ再生可能エネルギーのさらなる普及を目指し、適切な制度を作っていくことが、地球環境の持続可能性に繋がると言えるのではないでしょうか。