高圧電力の仕組みと料金の決め方
日本では、2000年代に入ってから段階的に電力小売の自由化が図られて来ました。高圧電力に関しては2004年から自由化されましたので、家庭用の低圧電力と比べますと比較的早い段階から進められていたのです。
しかし、考えてみますと高圧電力と低圧電力の具体的な違いや高圧電力の導入に関する実態や影響などを知っている方は、意外に少ないでしょう。ここでは、今後、高圧電力を本格的に導入したい方のために、基本的な知識や流れなどをご紹介して行きます。
高圧電力とは
高圧電力は、標準電圧6600Vの電力を変電設備を通して事業所内で変圧して需要することを言います。
契約電力は、50kwから2000kw未満に該当する契約種別になります。
主に製造業や中小規模の工場などの産業分野で使用されており契約電力500kwを基準にして高圧電力AとB に分類されています。
高圧電力A(500kw未満)では実量値契約方式が、高圧電力B(500kw以上)では協議方式が起用されています。
どちらも電気料金は、基本料金と電力量料金の二部料金制となっており、基本料金には割増制度と力率割引、電力量料金には季節別料金制度が含まれています。
業務用電力とは
契約電力50kW以上の需要家は原則「高圧」を契約する必要がありますが、その高圧受電の契約プランの1つです。
業務施設や商業施設など、基本的には平日昼間に電気を使用する需要家に適したプランです。中には土・日・祝日に使用量が増える需要家向け、夜間に使用量が増える需要家向けのプランなどがあり、電力会社によっては細分化されています。
業務用電力はほとんどのプランが「夏期」「夏期以外」で料金が分かれています。エアコンの使用などで消費量が増える「夏期」は料金料金が若干割高で、それ以外は若干安く設定されています。名称は「業務用電力」が基本ですが、電力会社によっては呼び方が異なり、東京電力では「業務用電力」、関西電力では「高圧電力AS」となっています。
また、各新電力会社にも大手電力会社と同様のプランが用意されていて、電力切り替えによって電気料金が安くなるケースが多いです。
高圧電力と業務用電力の違い
高圧受電とは、動力と電灯を一緒に契約する方が対象になります。
初めて高圧電圧を使用するには、変電設備が必要になります。
変電設備を使用することで、動力200Vと電灯100Vに変換して使います。
電力の利用により、高圧電力と業務用電力に契約が分類されています。
業務用電力 | 動力200Vと電灯100Vを併用 | 契約電力が2000kw未満の契約 | 事務所、官公庁、学校、病院、飲食店、商店、百貨店、倉庫、旅館、娯楽場など |
---|---|---|---|
高圧電力 | 動力200V使用(付帯電灯含) | 契約電力が2000kw未満の契約 | 工場など |
高圧電力の料金の仕組み
ここでは、高圧電力料金の計算方法や実際にどのように契約電力を決定しているのかまとめてみました。
電気料金の計算方法
月額基本料金と月額電力量料金と月額電気料金の計算の方法は、下記のようになります。
基本料金=契約内容☓単価☓(185-力率)/100
※力率とは、交流電気に仕事として有効な電力がどれだけの割合かを意味します。
電力量料金=使用電力量☓単価☓燃料費調整額
月額の電気料金=基本料金+電力量料金+再生可能エネルギー発電促進賦課金
契約電力料金の決め方
高圧電力Aの契約電力は、実量契約方式を採用しています。
実量契約方式とは、毎月使用した電力量に応じて契約金額を決定する方法です。
当月と直近過去11カ月の間の電力利用状況の中で、30分ごとの値(デマンド)を測定して最大値を基本料金に決定します。この最大需要電力は、同時に使用する負荷設備が多くなるほど値が大きくなります。デマンド値は、月単位でリセットされます。
この30分ごとに時間を区切ることを、デマンド時限(kw)と呼んでいます。
通常、電力会社の使用電力量は、1時間単位(kwh)になるのでデマンドは2倍の値になります。
具体的に例を挙げます。
200kwの負荷を30分使用しますと使用電力量は、200(30/60)=100kwh
デマンド値は、100kwh×2= 200kwになります。
現在の計測機器は、30分を前半と後半15分単位で測定してして平均値を表示しています。
ですので、前半の15分で500kwの負荷を使用して後半15分で400kwの負荷を使用した場合。
500(15/60)=125kwh
400(15/60)=100kwh
125+100=225kwh
1時間電力量は、2倍なので450kwhでデマンド値は450kwになります。
高圧電力を導入するメリットとデメリット
導入後に自分たちにとって、どのようなメリットやデメリットが発生するかをしっかりと想定しておくことは非常に重要です。
高圧電力を導入しようとする方の多くが経済的なメリットを期待するのでしょうが、それにこだわり過ぎてそれまで想定していなかったデメリットが導入後に出てくるケースも意外に存在しています。
高圧電力導入後に得られる思わぬメリット!
高圧電力は、かつて非常に大きな組織しか導入意義を見出せない時期がありましたが、最近は一般家庭とまでは行かなくても小規模の事業体でも高圧電力を導入するメリットを多く感じられるようになっているのです。
高圧電力の最大のメリットは、電気代の節約効果ですが、ここに来て非常に意外なものに対する節電も感じられるようになりました。例えば、自動車は、最近はEV車だけでなくて外部からの充電が可能なハイブリッド車も存在しています。
これにより、高圧電力サービスにて安く電力を購入出来れば、車の維持費にも大きく寄与するメリットが得られるようになる訳です。
最近の自動車用の充電用バッテリーの充電効率の向上は大変著しいものでして、これは1回の充電で走行できる距離をかなり伸ばすことを意味するのですから、現在は購入した高圧電力を使った様々なカービジネスにも発展させられる勢いさえも帯びつつあるのでしょう。
高圧電力導入に感じた意外なデメリットとは?
コストパフォーマンスにおいて大きなメリットが期待できる高圧電力ですが、実は導入後に感じた意外なデメリットも存在しています。その中で割とケースの多いものとして、受変電設備そのものの初期不良もしくは不具合になるでしょう。
高圧電力を屋内にて効率的に配電するユニットも多くのパーツによって製造されていますので、現在のような海外における大量生産方式では時としてハズレ品質のものもあります。
海外製の受変電設備と日本製のものとでは、製造方法は類似していても最終的な品質管理方式が大きく異なるでしょう。そのため、結果的に導入段階で品質に難があるケースが海外製においては非常に多い訳です。
受変電設備について海外製を導入する理由は価格が安いこともありますが、導入後早々にトラブルに見舞われることが多いことも事実です。可能であれば、日本の工場で製造された受変電設備を導入することを心掛けてください。
高圧電力では消費者の管理能力が求められる
高圧電力と耳にした時に、多くの方は低圧電力との違いは単なる使用できる電力量の差にあると思われがちです。しかし、実際のところ両者には配電などに関しても大きな違いがあります。
簡単に言えば高圧電力は電力を多めに買うことで、電力の単価を低圧電力よりも安くできるビジネスモデルだと言えるでしょう。その一方で高圧電力サービスを導入するためには、低圧電力と比べると初期費用が掛かることは否めません。
ただ、高圧電力は低圧電力よりも消費者自身の安全性に対する認識がなければ、管理上に大きく危険をもたらすリスクがあります。そのため、導入する機器の設定に関しても専門家任せの一辺倒ではなく、機器のコンディションを判断できる最低限の能力を持つことが望まれるのです。
高圧電力は関連機器もすべて自前で導入が必要
高圧電力や低圧電力共に安全性を維持して供給を受けるのであれば、最低限でも変圧機器を通さなければなりません。
一般的に、低圧電力が電力会社によって設置された電信柱に取り付けられている変圧機器を使用するのに対して、高圧電力になると変圧機器を消費者側で準備しなければならないでしょう。
このような自前の変圧機器を通常は【受変電設備】と呼びますが、スペックの低い変圧設備でもコアの部分だけで最低でも数百万することでも知られます。そして、それを消費者の施設内部における配電工事や毎年のメンテナンスも含める数千万円に達することもあって、高圧電力の初期投資は非常に高いものとなる訳です。
また、消費者の施設規模が非常に大きいところになりますと、受変電設備を含めた設備全体の管理者を専門で雇用することが望ましく、日常における機器のコンディション維持も自前で行うことを想定することが強く求められます。
高圧電力と低圧電力における導入のための基準は?
高圧電力か低圧電力、これから新規で何らかの建築物を建てようと思っている方は、その導入に関してどのタイプを進めるべきなのか意外に理解されていないことも多いでしょう。
ここで肝心なのは、その建築物に見合った電力量がどれほどのものになるのかと言う自分なりの見積です。高圧電力にするかの見極めは、この電力見積によって大きく左右されます。
一般的に高圧と低圧と言う定義づけの数値をみると、電力量が50キロワットを基準値にしていることが多いようです。つまり、日常的にそして継続的にこの電力量を上回る電力量だと高圧電力の導入に前向きなっても良いかもしれません。
しかし、50キロワット前後で推移しているのであれば、低圧電力を維持しながらもユニットを増設するなどの措置で対応することは可能でしょう。この数値を大幅に上回る将来的なニーズがあると判断される場合は、本格的に高圧電力の工事を進めて良いと考えられる訳です。
高圧電力の高圧電線との関係
低圧電力よりも随分前に小売自由化がスタートしている高圧電力は、一般的に高圧電線との直接連結によって供電されるのが基本ですので高圧電線との関連は非常に深いのです。
高圧電線と言えば、少し感電しただけでも体が黒焦げになるほどの電圧を持っていますので、その安全管理に対する対策は消費者側で綿密に取られなければなりません。しかし、一般の高圧電線から直接電気を受けると言うことは具体的に一体のどのような意味を持っているのでしょうか?
高圧電力は配電用変電所から直接電力が入って来る
高圧電力を高圧電線から得ると言う行為は、変電所からダイレクトに電力を供給してもらっていると言う意味を持ちます。一般的に変電所は3タイプありまして、基幹や二次、配電用変電所に明確に分けられているのです。
高圧電力でも超の付くほどの高圧な電力の変電になると基幹変電所で進められ、消費者へ配電されるレベルになるには、配電用変電所にまで流れて電力を落とさなければ実用できないでしょう。
つまり、一般消費者で使われる高圧電力は配電用変電所から高圧電線を伝って流れてきたものであり、万が一配電用変電所に異常があって電力供給が一気にストップした場合は電気機器の故障などを非常に発生しやすくなります。
そのため、高圧電力設備を導入するには無停電設備の導入も不可欠でして、高圧によって施設内の電気機器がダメージを受けないように危機管理をすることが非常に重要なのです。
さらに、高圧電力は低圧電力よりも火災のリスクも高くなりますので、高圧であることがどのような状態であるのかをよく理解してください。
高圧電力は工場以外の身近な施設に多く導入されている
電気のリーズナブルな大量消費に適した高圧電力サービスですが、その電圧レベルには大きな差がありますので工場のようなメーカーだけでなく、私たちが日常的に使っている身近な施設にも多く導入されている訳です。
高圧電力の大きな意義の1つに所有している電気機器に最高のパフォーマンスを発揮させることがありますが、それと同じくらい重要な意義として安定して24時間使い続けたいと言うものもあります。
ここでは日本のどのような施設で恒常的に導入されているのか、その使用状況と効率などを交えて見て行くことにしましょう。
官公庁や公共施設などの高圧電力導入の在り方
高圧電力による安定供電について大きく享受しているのが、官公庁や病院などの公共施設と言えるでしょう。このような施設は情報インフラとしての機能と生命維持の拠点と言う大きな目的を有するために、決して突発的な停電があってはならないところだと言えます。
一般的に公共施設への高圧電力には無停電装置を導入していなければならず、同時に自家発電できる設備を完備していることが望ましいと言えるでしょう。
ただ、熊本震災にも例があるように病院などでも停電を引き起こしたケースもあって、高圧電力設備の効果をより効率的に高める制御設備に関しては導入状況が病院ごとに一定していないと言うことも発覚しました。
そのため、今後の公共施設における高圧電力の導入に関するあり方は、日本全体の施設にて共通して認識すべき課題となっています。日本では地方の公共施設ほど無停電制御されていないところが多いので、早急に取り組まなければならない事態となっているのです。
マンションなどの集合住宅における導入ケース
高圧電力の導入にコストパフォーマンスにおけるメリットを受けやすいのが、マンションやアパートなどの集合住宅になります。マンションなどは専有区域である各部屋を購入して、住居と賃貸経営などの対象物として維持して行かれる方が大半です。
しかし、マンション全体からみると専有区域の各所有者が大きな1つの建物を維持して行くと言う責任も負っています。そのため、少しでも電力を安く購入できるように高圧電力を導入することが一般的でしょう。
また、マンションの場合は耐用年数も考慮しなければなりませんので、少しでも電気代を安くするため太陽光発電設備も併設するところが多くなっているのです。つまり、マンションのような集合住宅における高圧電力の導入経緯のほとんどが公共施設のそれとは異なり、マンションを維持するためのランニングコストを下げると言う目的となっています。
ただ、集合住宅の場合は高圧電力施設の管理者を自前で用意することはありませんので、そのほとんどは管理会社に有償で委託することが多くなる訳です。
高圧電力の導入には、必要な経費とそれを安全に維持するだけの知識が求められると言うことがお分かりいただけたと思います。
高圧電力会社を替えて想定される不安点
高圧電力も電力自由化になっているので、自由に電力会社を選ぶことができます。
低圧電力と同様に電力会社を替えても、停電や電力の供給での不具合などは起こりません。
新会社の場合、倒産することもあるかもしれませんが、2020年までは政府の施策により全国の世帯に送電することが義務になっています。
そのため契約会社が倒産しても、必ず大手の従量電灯プランに移行されるので安定して電力が供給されます。
ただし、以前の電力プランに戻るので電気代は高くなることを念頭に入れておきましょう。
高圧電力会社が倒産したらどうしたらよいのか?
万が一、契約した新電力会社が倒産した場合、契約者はどのように対処したらよいのでしょうか。
ここでは、その流れをまとめてみました。
倒産した場合は、先方から倒産のお知らせとして電力供給が不可能になる通知が届きます。その通知には、最寄りの大手電力会社の従量電灯に移行できるという内容が記載されています。
契約者は、御自身で新しい電力会社を探すのか大手の従量電灯に移行するのか選択して、新しく契約する電力会社に連絡をします。
連絡すると新しく契約した電力会社に切り替わります。
倒産する場合は、経済産業省の指針により少なくとも倒産の15日前には通知をしなくてはいけない決まりになっていますが、中には通知なしで雲隠れしてしまう会社もあるかもしれません。
ここからはあくまでも一例として聞いて頂ければよいのですが、契約者に通知をしないということは一般送配電会社に不払いが続いている可能性があります。
不払いが続くと、一般送配電会社から契約を解除されてしまうので電線を利用することができなくなります。
この場合は、契約者には契約を解除する5日前までに契約解除の通知が来ます。
内容としては、契約解除するので最寄りの大手電力会社の従量電灯に移行できる旨が書かれています。
ですので、通知を受けた契約者は新しく契約する電力会社を決定して移行しなくてはいけなくなります。
そういう意味では、新電力会社に移行した後もその電力会社の経営状況や動向などに普段から関心を持つことが大切になってきます。
既存の大手電力会社ですと電気代が高くても、そういうリスクはまずありません。
ですので、新電力会社を選択する際には、そういう点もよく踏まえて判断していく必要が出てきます。
使用状況に合わせた高圧用電気料金プランを選び、よりコストの削減を
高圧用の電気プランは、想定される電力量に合わせたものを選びましょう。初期費用もかかるためその費用も想定しなければなりません。安全性の面からしっかり管理することも必要です。
また、高圧電力は低圧電力に比べ使用する電力量も桁違いのため、使用状況に合わせた最適な料金プランを選択し、より電気料金の削減をすることが大切です。