高圧電力の導入でコスト削減できる?高圧へ切り替えるメリット・デメリット
電力に関するコストを抑えるためには、契約内容の見直しが重要です。例えば、高圧電力の料金は、一般的に低圧よりも単価が安く設定されています。そのため、現在低圧で契約をしている法人は、高圧へ切り替えることで、電気料金を削減できる可能性があるのです。
さらに、電力会社選びも大切なポイントです。電力自由化によって、すでに高圧電力を契約している法人も、よりお得に契約できる電力会社への切り替えができるようになっています。
この記事では、高圧電力とは何か、さらに、低圧から高圧に切り替えるメリット・デメリットなどを紹介します。
高圧電力とは?どのような施設で使われるのか
高圧電力とは、一般的に「契約電力が50kW以上2000kW未満で、標準電圧が6600Vとなる電力」のことです。
一定以上の電力需要のある施設に供給されており、主に中規模以上の工場やオフィスビル、商業施設などで使われています。
高圧電力は、発電所から変圧されずにそのまま電力が送られてきます。したがって、高圧電力を実際にコンセントなどで使用するためには、施設内にキュービクルと呼ばれる変圧器を設置して、低圧の電気へと変圧する必要があります。
かつては地域電力会社からのみ購入可能だった高圧電力でしたが、2004年4月から高圧電力の電力自由化がスタートしています。高圧電力の利用者は、契約する電力会社を自由に選べるようになりました。
高圧電力と低圧電力の違いとは?契約内容を確認しよう
主に商業施設などで使われる高圧電力は、一般家庭や小規模店舗で使われる低圧電力とは、契約電力の大きさやキュービクル設置の有無や料金などの点で違いがあります。
ここでは、高圧・低圧の違いを説明しつつ、さらにどちらで契約しているのか確認する方法について紹介します。
高圧電力と低圧電力の違い
高圧電力と低圧電力の主な違いは以下の2点です。
契約電力の大きさ
高圧と低圧は契約電力の大きさに違いがあります。高圧は原則として50kW以上の契約、低圧は50kW未満の契約です。
そのため、高圧は消費電力の多い中規模以上の施設で利用されるのに対し、低圧は主に電力需要がそこまで大きくない小規模なオフィスや商店、一般家庭で利用されます。
キュービクル設置の有無
高圧で契約した場合、発電所から高圧(6600V)で電力が届けられます。そのため、届けられた電力を使うためには、利用者側でキュービクル(変圧器)を用意して、100Vや200Vに変圧しなくてはなりません。
一方、低圧では既に変圧済みの電力が届くため、変圧しなくてもそのまま電気を使うことができます。
区分 | 契約電力、 | キュービクルの有無、 | 主な契約対象 |
---|---|---|---|
高圧電力 | 50kW以上 | あり | 中規模以上の工場・オフィスビル・商業施設など(※) |
低圧 | 50kW未満 | なし | 小規模の工場・オフィス・商店など(※) |
※50kWを越えても低圧電力を使用する場合や、2,000kWを越えても高圧電力を使用する場合など一部例外あり。
どちらで契約しているのか確認する方法
現在、高圧か低圧どちらで契約しているのか分からない場合は、次の方法で確認が可能です。
請求書を確認する
請求書や検針票で契約種別を確認しましょう。高圧は「高圧電力」(例:高圧電力A、高圧電力ASなど)、低圧は「低圧電灯」と記載されている場合が多く、請求書をチェックするだけで現在契約中の電力の種類を確認できます。
キュービクルの有無を確認
キュービクルの有無も判断材料になります。
低圧電力はコンセントで使えるように柱上変圧器で変圧されてから住宅などに送られますが、高圧電力は利用者が自分で設置したキュービクルで変圧してから利用します。
屋外や屋上などにキュービクルが設置されている場合は高圧、設置されていない場合は低圧での契約と判断できるでしょう。
高圧電力でかかるコストはどのくらいなのか
高圧電力は料金単価が安いため、月々の電気料金節約に役立つと言われています。しかし、キュービクルの設置・メンテナンスには費用がかかるため、初期費用やランニングコストは低圧よりも高めです。
ここでは、高圧電力でかかるコストについて解説します。
電気料金の単価は高圧電力が安い
一般的に、高圧電力の料金は、低圧電力に比べて安い傾向があります。目安として、高圧電力は1kWあたり15~20円、低圧電力は20~30円程度。1kwあたり5円以上お得になります。
高圧電力の電気料金が安くなる主な理由は主に2つです。
1つは、送電の際に変圧をせずにそのまま送電するため、電力会社側でコストがかからないからです。もう1つは、高圧電力の場合、大量に電気を使う事業者との契約になるため、売電単価を下げても売上を確保できる点にあります。
電気を大量に使う施設であれば、高圧電力で契約した方がお得になる可能性が高いといわれています。
キュービクルの設置やメンテナンスに費用がかかる
前述したように、電気料金そのものは高圧電力のほうが低圧料金よりもお得です。その代わり、高圧電力には高圧電力ならではのコストがかかってきます。それが、キュービクルの設置費用やメンテナンスコストです。
高圧電力にはキュービクルの設置が必須であり、導入の時点で200~600万円程度の設置費用がかかります。
具体的な設置費用は容量によって異なりますが、100kW(コンビニや小規模な工場など)で200万円程度、200kW(病院やテナントビルなど)で300万円程度、300kW(スーパーマーケットや中規模工場など)で400万円程度、500kW(大型の病院やテナントビル、工場など)で500万円程度が目安となります。規模の大きな建物ほど多額の設置費用が必要です。
また、設置後のメンテナンスにもお金がかかります。メンテナンスを外部委託した場合の保守点検費用は、容量にもよりますが、月額1~3万円程度が目安です。
ちなみに、キュービクルの耐用年数は、使用環境にもよりますが20~30年程度といわれています。
高圧契約に切り替えるメリット・デメリット
電力使用量が多い場合、高圧契約に切り替えたほうが電気料金が安くなる可能性があります。一方で、初期費用がかかる点やメンテナンスの必要がある点などについては注意が必要です。ここでは、高圧電力に切り替えるメリットと注意点を紹介します。
電気料金が安くなることがメリット
高圧契約に切り替えるメリットは、なんといっても電気料金が安くなることです。
たとえば、1日で500kWの電力を使う施設の場合、高圧に切り替えて1kWあたりの電気料金が10円下がると、1日で5000円も電気料金が安くなります。結果的に、年間180万円以上のコストを削減できるため、たとえキュービクルの導入費用に200万円かかっても、1年と数カ月でもとが取れてしまうのです。
長い目で見れば、初期費用やメンテナンスコストを考えても、キュービクルを設置して高圧電力を使ったほうがお得になるケースがあります。
初期費用やメンテナンスに注意
電気代の節約に大きく貢献する高圧契約ですが、切り替えの際には注意点もあります。
初期費用
キュービクルの設置時には高額な設置費用がかかります。たとえ1年程度で初期費用を回収できたとしても、最初にまとまった資金を用意しなければいけません。導入の時点で、最低でも200万円は用意できなければ設置は厳しいといえるでしょう。
メンテナンス費用
高圧電力を扱うキュービクルは、感電事故のリスクも伴う危険な装置であり、事故を防ぐためにもこまめなメンテナンスが必要です。
実際、キュービクルは月に1度または隔月で保守点検をすることが法令で定められています。こうした保守点検は、多くの場合、電気主任技術者や電気保安法人へ外部委託されることになるため、毎月メンテナンス費用を外部の業者に支払わなければなりません。
高圧電力切り替えで電気料金を削減するコツ
せっかくお得な高圧電力へ切り替えるなら、電気料金をもっと削減する方法も知っておきたいですよね。ここでは、電気料金削減のために知っておきたいコツを2つ紹介します。
契約している電力会社プランを見直す
高圧契約の場合も、電力自由化によって電力会社を自由に選べるようになっています。電力の使用状況に合った電力会社を選べば、電気料金を削減できるかもしれません。
また、同じ電力会社でも料金プランを見直すことで、電気料金が安くなる可能性もあります。一度契約している会社の料金プランを確認してみましょう。
太陽光発電や蓄電池を導入する
太陽光発電や蓄電池の導入を検討するのもおすすめです。太陽光発電や蓄電池を使って、電気を自社で作って自社で消費する「自家消費」を増やせば、電気代を大幅に削減できます。さらに、災害時の電源も確保できるという点も見逃せないポイントです。
高圧電力に切り替えるなら電力会社も選ぼう
もともと電気の使用量が多い法人の場合、低圧から高圧契約に切り替えることで、電気料金を安く抑えられる可能性があります。コストカットを考えているのであれば、一度契約内容を見直してみましょう。
また、せっかく高圧に切り替えるのであれば、できるだけ電気料金を安くできる電力会社を選びたいものです。スイッチビズでは、高圧契約ができる電力会社を最大5社まで一括で見積りできます。自社に合ったプランを選ぶためにも、ぜひ一度利用してみてはいかがでしょうか。