高圧電力2種類の定期点検と8つの手順
高圧電力には定期的な点検が義務付けられており、月次点検と年次点検の2種類があります。その詳しい点検方法や項目などについて解説します。
高圧電力の月次点検と年次点検の具体的な内容
月次点検と年次点検は、それぞれこのような内容となります。
月次点検の内容
点検頻度 | 毎月1回、2か月に1回、3か月に1回のうちどれか |
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点検内容 | 電気を停止せずに電気設備の保安点検を行う。受電設備、負荷設備の点検、測定等。 |
点検方法 | 目視や双眼鏡を用いて、損傷や変形、異常音、異臭等の発生有無を外部からチェック |
点検結果を記録用紙にまとめ、お知らせします。改修事項がある場合は、連絡責任者に報告した上で事故防止に努めます。電力使用のムダが無いかのチェックも行い、快適な高圧電力の状態へと導きます。
年次点検の内容
点検頻度 | 1年に1回以上(設備条件により頻度が変わる) |
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点検内容 | 電気設備の総点検を行った上で安全確認を行う |
点検方法 | 精密試験機などの測定器具類を用いて測定や検査を行う |
高圧電力の運転を停止して各機器の清掃を行いながら、月次点検では行う事が出来ない部分の点検を外部からの目視や操作により重点的に行い、綿密で手厚い点検となります。
電気を停止するので停電となってしまいますが、お客様に支障を与えないよう打ち合わせをした上で停電を決定し点検を行います。どうしても停電を行う事が困難な場合は、無停電検査システムにより実施する事も可能となります。
高圧電力の具体的な点検項目
具体的な点検の方法は外観目視確認であり、これらの細かい項目により点検を行っていきます。
設備全般の点検項目
保護柵 | 柵又は塀の破損、鎖鍵状態 |
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設備敷地構内 | 動物や植物などの浸入、飛来物の有無 |
鉄構架台 | 損傷、変形、腐食、標識類の脱落、飛来物、植物の繁茂、植物の接触、動物の営巣 |
架空線引き込み部・架線部 | 放電音、光、異臭(過熱臭)、変色、腐食 |
ピット・マンホール | 放蓋、金属部腐食、内部薄い滞留、汚損 |
受電用地中線引込部・ケーブル、支持物 | 防水鋳鉄管等の漏水、ケーブル外装の損傷、ケーブルラック・ダクトなどの損傷・腐食 |
特高機器部の点検項目
特高機器共通
機器本体、制御、機構箱 | 据付状態、異臭、損傷・腐食(発錆)、汚損、鎖鍵状態、機側配線・配管の損傷・腐食 |
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運転状況 | 異音、異臭、異常振動 |
開閉表示器 | 損傷・腐食、表示異常 |
主回路端子部 | 変色・腐食 |
がいし類 | 破損・亀裂、汚損 |
遮断器動作回数計 | 動作回数の記録 |
補機類
圧縮空気発生装置、空気配管・バルブ | 圧力異常、配管損傷・腐食、漏気音・光 |
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断路器
主回路接触部 | 閉路・開路状態、変色、放電音・光 |
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油遮断機
機器本体 | 漏油 |
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油面計 | 油面異常 |
空気遮断機と真空遮断機
空気遮断機、真空遮断機 | 特高機器共通項目に準ずる |
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ガス遮断器
ガス圧力計 | 圧力異常 |
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ガス絶縁開閉装置
ガス圧力計 | 圧力異常 |
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検圧装置 | 電圧充電表示異常 |
油入変圧器
機器本体 | 漏油 |
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油面計、圧力計 | 油面異常 |
温度計 | 温度上昇 |
放圧装置・放圧板 | 破損・亀裂・損傷 |
負荷時タップ切替装置動作回数計 | 動作回数の記録 |
油劣化防止装置(シリガゲルブリーザー) | 吸湿剤の変色、漏油、油壺の油不足 |
ガス絶縁変圧器
ガス圧力計 | 圧力異常 |
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温度計 | 温度上昇 |
負荷時タップ切替装置動作回数計 | 動作回数の記録 |
モールド変圧器
機器本体 | モールド表面の亀裂・汚損・カーボン付着 |
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温度計 | 温度上昇 |
油入変成器
機器本体 | 漏油 |
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油面計 | 油面異常 |
圧力計 | 圧力異常 |
避雷器
動作回数計 | 避雷器動作回数の記録 |
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接地線、接地端子箱 | 接地端子の脱落・腐食、接地線の断線 |
制御ケーブル | 機器制御箱引込部の損傷・腐食、ケーブルラック・ダクトなどの損傷・腐食、貫通部シール破損・脱落、小動物侵入 |
高圧電力を点検する時の8つの手順
点検時の作業手順は、このような流れで行います。
1.出発前の準備
安全用具などの確認 | 外観上の点検確認を行います |
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検電器の機能確認 | 検電器のテスターなどをあらかじめ確認して万度に使える状態としておきます |
測定器具の確認 | 測定器具の状態をφ目視で点検をし使える状態にしておきます |
2.作業前の打ち合わせ
作業前の打ち合わせは、点検作業のスムーズさと安全確保する重要な手順の1つです。
作業前の打ち合わせ |
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連絡責任者との打ち合わせ |
作業環境の細かい確認 |
設備の現状確認や作業内容の周知であるTBMの実施 |
服装の点検(足や腕などの露出は一切禁止) |
測定器・工具・安全用具の点検と配置 |
3.停電操作
停電操作手順による確認 | 間違いのない停電操作となるよう、細かく確認をします |
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作業責任者、作業車との連絡体制の周知徹底 | 工事体制の周知徹底を行い、間違いのない停電作業にします |
関係者に周知徹底 | 停電が影響する関係者に、停電前に通知して周知徹底します |
4.短絡接地器具の取付け
短絡接地器具の取付け |
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検電器により無電圧の確認 |
放電棒による残留電荷の放電確認 |
標識板の取付け |
5.点検作業
点検作業 |
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高圧機器類の外観・観察点検と清掃 |
絶縁抵抗測定試験(測定後、残留電荷の放電) |
接地抵抗測定試験 |
保護継電器の動作特性試験 |
その他の測定・試験 |
6.作業結果の見直し
作業結果の見直し |
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短絡接地器具の取り外し |
標識用具の取り外し |
測定器・工具・安全用具などの員数を確認 |
清掃用具などの取付け |
作業責任者は、作業者全員及び関係者に終了を通知 |
7.送電操作
送電操作 |
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人員の点呼し |
送電操作手順による確認 |
関係者に周知徹底 |
8.点検結果報告
点検結果の報告をして、完了となります。
高圧電力の安全な運用のために電気事業法で定められていること
電気工作物の安全を守るために、電気設備設置者は「保安規定」を作成し経済産業大臣に提出することが求められています。電気工作物とは、発電所や変電所、配線などの電気を供給するための設備全般のことを言います。保安規定に記載すべき内容などについて説明します。
電気事業法の保安規定
電気事業法では、保安規定に関してこのように示しています。
- 事業用電気工作物の設置を行う方は、事業用電気工作物の工事や維持及び運用に関する保安を確保する為に、経済産業省で定められている保安規定を定めて、事業用電気工作物の使用開始前までに経済産業大臣に届けなければいけません。
- 事業用電気工作物を設置する方は、保安規定を変更した場合は遅れる事が無いように変更した事項内容を経済産業大臣に届けなければいけません。
- 経済産業大臣は、事業用電気工作物を工事や維持運用に関する保安を確保する必要があると認められる場合は、事業用電気工作物を設置するものに対して保安規定を変更する事を命じる事が出来ます。
- 事業用電気工作物を設置する者やその従事者は、保安規定を守らなくてはいけません。
保安規程届出書について
保安規定を届け出るには、「保安規定届出書」という書類を提出します。
設置者、統括管理する事業場、電気主任技術者などの記載がある型式の書類に必要事項を記載し、別途組織図や巡視点検基準及び測定項目、等を添付して届け出を出します。
保安規定の内容を変更した場合は、変更した事項を延滞なく届けなければいけません。
電気主任技術者の選任
高圧電力契約の際は、専門の知識を持った電気主任技術者の選定が必要となります。
電気事業法では、事業用電気工作物の工事や維持、保安監督をさせる為に、電気主任技術者免状の交付を受けている人の中から電気主任技術者を選任する事が定められています。
高圧電力の場合、大勢の不特定多数の人が出入りする場所へ送電するので、扱いを間違ってしまうと火災などの事故を起こしてしまう可能性もあります。ですので、専門の知識を持った電気主任者の選定が必要不可欠なのです。以下の様な設備の場合、電気主任技術者の選任が必要になります。
- 電気会社などから600Vを超える伝札で受電し電気を使用する設備の場合
- 発電設備とその設備で発電した電気を使用する設備の場合
- 電力会社などから受電の為の伝線爐以外に郊外に配線される伝線爐を有する電気設備の場合
このような高圧電力設備を設置する場合、電気事業法に則り電気主任技術者を選定し、定期検査も怠らずしっかり行うことで安全な運用をしていかなければなりません。
今回は、高圧電力の点検項目と手順について詳しく解説いたしました。
高圧電力の点検と手順を把握しておくと、電気主任技術者のもとに決められた点検内容をスムーズに実施する事が出来ます。
適切な保安管理で、高圧電力の安全で適切な運用を心がけるようにしましょう。