独立系発電事業者(IPP)と特定規模電気事業者(PPS)の違い
独立系発電事業者(IPP)とは?
独立系発電業者(IPP)は自前の発電施設で作った電気を電力会社に販売する企業のことです。
※Independent Power Producerの頭文字を取って、IPPとも呼ばれます。
独立系発電事業者は卸売業のような存在と言うことができるでしょう。
基本的なルールとは?(卸電力入札制度)
独立系発電事業者の参入に合わせて、卸電力入札制度も導入されました。
電力会社が独立系発電事業者から電気を買う時は5年以上で10万kWh、もしくは10年以上で1000kWh以上の取り引きを約束して入札しなくてはいけないというルールになっています。
なぜ独立系発電事業者が登場してきたのか?
以前まで電気は公共事業として東京電力・中部電力・関西電力などの限られた企業でのみ構成されていました。
しかし、そのような状況下では電力会社ごとの競争が起こらず、電気料金も高くなってしまいがちでした。
そういった状況を改善するべく、総務庁(当時)が1993年に通商産業省(当時)にエネルギー業界の規制緩和を提言し、ここから電力の自由化が進んでいくことになります。
つまり電力会社以外の電力を積極的に利用していく流れが、ここから生まれてきたのです。
どんな企業がIPPとして参入したのか?
石油を精油する企業や製鉄所を持っている企業が、工場の排熱を利用し発電を行ったり、自社にある発電施設の有効活用という目的で参入したりするケースが多くなっています。
主な参入企業
- JX日鉱化石エネルギー株式会社
- 新日鐵住金
- 昭和電工
- 日立製作所
- 日立造船
- コスモ石油 など
独立系発電事業者に関するメリットまとめ
買電する側のメリット
発電所の建設は用地買収から漁業権の取得など、様々な段階を踏み、長い時間とコストが掛かっていました。
独立系発電事業者が電力会社に提示した売電価格は予想以上に安いものであり、発電施設を確保するため新しい土地を取得する費用も必要なくなるので、大幅なコストダウンに成功しました。
売電する側のメリット
独立系発電事業者が発電に使う燃料は、元々廃棄されていたエネルギーというケースが多いです。
身近な例では「読まなくなった古本を捨てずにブックオフで売る」ようなもので、売電する側にもメリットが大きいことがお分かりいただけるのではないでしょうか。
独立系発電事業者(IPP)と特定規模電気事業者(PPS)の違いは?
独立系発電事業者(IPP)は、自社保有発電所(200万kWh以下)の電力を一般電気事業者に販売していました。
しかし、2016年4月より、今までの基準が廃止され一般家庭でも購入可能になっています。
主に化学メーカーや製鉄所を所有している大手工業会社が、発電設備の余ったエネルギーを有効利用する目的でおこなっています。
供給義務は特にないので、発電を必ずしなくてはいけないわけではありません。
特定規模電気事業者(PPS)は一般電気事業者以外の電力供給会社で、一般電気事業者の所有する送配電ルートを使い電力販売しています。
一般電気事業者とは、東京電力など今までの主要電力会社10社のこといいます。
販売先は50kWh以上の電力を需要している一般消費者が対象で、工場や大きな商業施設などに売電していました。
2016年4月に電力自由化がスタートしてからは、一般家庭やスーパーなどにも供給されています。
特定規模電気事業者は、電力供給するときに送配電ルートを使用するので、その料金を一般電気事業者に支払わなければなりません。
特徴としては、一般電気事業者よりも電力単価が安く原子力発電以外の再生エネルギーを主力にする業者が多いことです。
海外で独立系発電事業者(IPP)はどのような展開を見せているのか?
電力取り引き市場が発達している欧米では、独立系発電事業ビジネスはある程度の地位を獲得していて、三菱商事のように海外での成功を背景に日本でも発電事業を行っているケースもあります。
また、発展途上国などでは外国から独立系発電事業者を積極的に誘致しようという動きが盛んで、日本の電力会社や商社なども協力体制を取って、色々な国で独立系発電事業を興しています。
独立系発電事業者の抱える環境問題とは?
独立系発電事業が事業参入する際に大きなハードルになったのが「環境問題」です。
せっかく落札されたにも関わらず、厳しい環境規制に引っかかり泣く泣く中止にせざるを得なくなった事業者も存在しました。
また、基準はクリアしていても、多くの独立系発電事業者の発電所では燃料に石炭や残渣油(※1)を使っていて、地球温暖化を防ぐため二酸化炭素を削減しようという、世の中の風潮に逆行するといった問題点も指摘されています。
※1:残渣油とは蒸留工程の精留塔から抜き出される油のことで、残油、釜残油とも呼ばれます。
IPPやPPSの誕生で、電力自由化は今後どうなっていくのか?
前述の特定規模電気事業者(PPS)は50kWh以上の電力需要者だけに電力販売が認められていたのですが、2016年にその制約がなくなったことで、一般家庭に向けて電気を販売することが可能になりました。
現在では三井物産株式会社、本田技研工業株式会社、大和ハウス工業株式会社、株式会社ヤマダ電機、株式会社DMM.com、ソフトバンクでんき、auでんき、その他にも多くの一流企業が次々と参入している状況になっています。
この様に現在は、独立系発電事業者(IPP)より特定規模電気事業者(PPS)が注目されている状況になっています。電力会社や関連省庁の力が強く、自由化がなかなか進まなかった頃を思えば、大きな進歩と言えるでしょう。
ただし、課題もないわけではありません。
先にお話しした環境問題のほか、電力自由化したにも関わらず電気料金についてもあまり下がっていないことは否めません。