電力コストを下げるには?デマンドコントロールで無駄をなくそう
電力コストの削減には様々な方法がありますが、まず検討していくべきはデマンドコントロールです。
設備刷新ほどコストがかからず、コツコツと行うべき省エネ行動よりも大きな効果が期待できるからです。電気使用量の多い工場や商業施設、オフィスビルなどでは、電気コストを抑えることで経費を削減できます。
この記事では、デマンドコントロールと電力コストの関係や、メリット・デメリットについて解説します。
経費削減のため、ぜひ参考にしてください。
デマンドとは?
「デマンド」もしくは「デマンド値」とは需要電力のことで、30分間に使用する電力量の平均です。
電力会社と50kW以上の業務用高圧電力でデマンド契約をしている場合、常にデマンド値が計測されています。
たとえば、最初の15分間に500kW使用し、残りの15分で300kW使用した場合、30分間あたりの平均使用量である400kWがデマンド値となります。
つまり、前半に電力を使いすぎたとしても後半の使用電力を抑えることによって、デマンド値を低くすることができるということです。
デマンドと電力コストの関係
電力コストの内訳は「基本料金+電気量料金+消費税」です。このうち、基本料金は「基本単価×年間の最大デマンド値(最大需要電力)×力率割引(※)」で算出されます。
力率とは電力会社から送り出された電力に対して、有効に使われた電力の割合です。力率が85%を超える場合、超過分1%ごとに基本料金から割引されます。
逆に、85%に満たない場合は不足分1%ごとに基本料金が割り増しされます。
つまり、最大デマンドの高低が基本料金に大きな影響を与えるのです。
最大デマンドを低く抑えることができれば基本料金も安くなり、電気コストの削減につながります。
デマンド契約のメリットの1つは、日常的に最大デマンドを意識して節電に取り組めるようになることです。デマンド契約の詳細については、こちらの記事をご覧ください。
デマンドを見ないとどのくらい損するか
基本料金の単価は、過去1年間の最大デマンド値を基準に決定されます。
過去1年間で30分間だけでも使用量の多い時間帯があれば、契約電力プランも高いほうへ変更され、基本料金が一気に高くなってしまうのです。
最大デマンド値が300kWと250kWの場合に基本料金がどのくらい違ってくるかを、以下の表で紹介します。
【最大デマンド値による料金の違い】※東京電力 高圧電力Aの場合
最大デマンド値 | 300kW | 250kW |
---|---|---|
1ヶ月の基本料金 | 38万7750円 | 32万3125円 |
1年間の基本料金 | 465万3000円 | 387万7500円 |
1年のうちのわずか30分間だけ50kW多く使ってしまったことにより、1年間で77万5500円も電力コストが無駄になることがわかります。
ですから、デマンド値を把握して最大値を抑えることにより、電力コストを大きく削減することができるのです。
デマンドコントロールについて
ここでは、デマンドコントロールの仕組みや機能、対象設備、導入のメリット・デメリットについて、それぞれ、説明します。
デマンドコントロールとは
デマンドコントロールとは、あらかじめ需要電力の目標値を設定し、需要電力(デマンド)が目標値を超えないように抑制することです。デマンドコントロールに専用機器を利用すると、設定した目標値を超える恐れがある場合にアラームや警報を発します。
最大デマンドの抑制方法としては、電気機器を自動で制御するタイプ(デマンドコントロールシステム)と、手動で制御するタイプ(デマンド監視)があります。
デマンドコントロールシステムを導入すれば、知らないうちに最大デマンドが大きくなることを防止できるため、電気量コストの削減につながります。
デマンドコントロールの対象設備
デマンドコントロールでは電気使用を制限する機器を個別に選択することも可能です。
ただし、医療機器など生命維持に関わるものや、工場の製造機器など運営に関わるものに使用する電力を制限するのは避けましょう。使用電力量を制限すると業務に大きな支障が出る機器は除外した上で、使用電力が大きい機器である空調や照明を制限対象にします。
最大デマンドが設定値を超えないように空調設備を制限するといっても、空調が突然、停止して使えなくなるわけではありません。
デマンド値を超えそうになった場合に風量を下げたり、設定温度を変更したりすることによって、使用電力を抑えていきます。
デマンドコントロールのメリット・デメリット
デマンドコントロールを取り入れる最大のメリットは、基本料金の上昇を防止することによって、電気コストを低く抑えられる点です。
デメリットとしては、最大デマンド値が設定値を超えないように意識させることが、現場のストレスになりかねないことです。
空調を制限しすぎると作業環境が悪化し、かえって業務効率が下がるおそれも出てきます。
契約電力会社の見直しでも電力コストを下げられる
電力コストを下げるためには、契約電力会社の見直しも有効な方法です。
使用電力 1,112,261kWh/年の工場の例を紹介します。この工場では、電力会社を変更しただけで年間693万円の削減に成功しました。
電力会社を変更する前の電気代:2,610万円/年
新電力へ切り替えた後の電気代:1,920万円/年
新電力会社への切り替えは、デマンドコントロールのように電気の使用を抑える必要はありません。
電力使用についての従業員のストレスになる心配もなく、労働モチベーションを下げずに電気代を下げる方法として、検討する価値があります。